心臓血管外科 後期研修プログラム |
1.はじめに |
2.研修項目 |
1.医の倫理に基づいた適切な態度と習慣を身につける |
心臓血管外科に関する十分な専門的知識と技量を有する者を養成し、社会からの信頼と評価を得て、医療の中で位置付けされるための専門医資格獲得を目的とする。 また医療技術のみならず強い責任感と倫理観を持ち、医療事故防止対策、感染対策、医療経済等にも十分に配慮できる有能かつ誠実な、信頼される心臓血管外科専門医を育成する。 |
2.医療安全管理セーフティマネジメントの研修を受ける |
医療安全管理委員会は、策定した医療安全管理指針に基づき概ね6か月に1回の医師を含めた全職員を対象に研修会を開催し、医療従事者の個人レベルでの事故防止対策と医療施設全体の組織的な事故防止対策の二つの対策を推し進めることで、事故を無くし、患者が安心して安全な医療を受けられる環境を整えることをすすめている。 |
3.生涯学習を行う方略の基本を習得し実行できる |
急速に発展を遂げる心臓血管外科の治療方針、手技、薬剤、周辺医療機器に関する知見のアップデートは必要欠くべからざるものである。 当科では抄読会および症例検討会を週各1回、循環器科と協同開催し、循環器疾患全般の研修を行う。 定期的な学術集会、地域研究会への参加を病院として保証し学術集会での発表、研究論文および症例報告の発表を推奨する。 |
4.医療経済・保険について研修する |
保険制度全体が見直される時代の中で、高齢化社会への対応及び人口動態への対応、地域医療における病院の果たす役割・機能・連携の在り方、及び病院の経営、利用者の経済的負担と治療継続などあらゆる分野から総合的に治療を進めるために概ね年2回の研修会を開催する。 |
3.手術症例数 |
2010年 | 2011年 | 2012年 | 平均年数 |
121例 | 121例 | 169例 | 137.0例 |
4.カリキュラム |
教育方針 |
医療技術のみならず強い責任感と倫理観を持ち、医療事故防止対策、感染対策、医療経済等にも十分に配慮できる有能かつ誠実な、信頼される心臓血管外科専門医を育成する。 第一年目はこの目的の基礎形成を目指す。心臓・血管系の発生、構造と機能を理解し、心臓・血管疾患の病因、病理病態、疫学に関する十分な知識を持つ。 心臓疾患・血管疾患の診断に必要な問診および身体診察を行い、必要な基本的検査法、特殊検査法の選択と実施ならびにその結果を総合して心臓・血管疾患の診断と病態の評価ができる。 診断に基づき、個々の症例の心身両面に対応して心臓・血管疾患に対する手術方法を適切に選択し、安全に実施することができる。 関連分野の教科書、論文を熟読し、学術集会に参加し、基本知識を習得する。 |
方策 |
◆症例の種類◆ |
当科における心臓血管外科手術は後天性心疾患、成人先天性心疾患、大動脈疾患、頸部から下肢の末梢動脈疾患、静脈瘤、透析用シャント手術などである。これらの実地手術を通じて心臓血管外科医としての基礎部分の構築をおこなう。 心電図、心血管超音波検査、心臓血管カテーテル検査を実施し、放射線検査所見などを分析する。 心臓・血管疾患の内科治療の知識を習得する。周術期管理などに必要な病態生理の基本を理解する。周術期の輸液・輸血について 適切に施行することができる。胸部レントゲンで無気肺、気胸、肺炎、胸水貯留、心不全が診断できる。 |
◆症例数◆ |
当科で施行する手術に助手として参加する。おおむね開心術、心拍動下冠動脈バイパス術合計で60-70例、ほかのステントグラフトを含めた大動脈手術20-30例である。 またこのほかにレーザー治療を含めた静脈瘤手術が20-30例、透析用シャンを作成手術が30-40例である。 これらの手術に助手として、あるいは平易な症例では指導医のもと執刀医として研鑽を積む。 また心臓血管外科領域に重複する他科疾患についてもICUにおいて指導医のもとに協力して診療にあたる。 |
◆手術の範囲◆ |
合併症のない通常の心臓血管外科手術において、開閉胸、開閉腹などの基本的手技が問題なく施行できることを目標にする。 また体外循環(人工心肺)と心筋保護を現場で理解し、回路の組み立てやバランス計算方法など体外循環技術の基本について習得する。可能であれば体外循環設立のためのカニュレーション手技を施行する。 またこのためには手術をはじめとする外科診療上必要な局所解剖について理解していなければならない。 |
教育方針 |
手術室内での基本的手術手技を習得するのみならず、主体的に基本的手技を進めうることを目標とする。 このほかに診療上必要な患者さん、御家族、関連する他科医師、周囲のparamedical staffと必要なコミュニケーションを構築することができる。 患者さんとその関係の方々に病状と外科治療に関する適応・合併症・予後について十分な説明ができインフォームドコンセントを得る事ができる。 手術侵襲の大きさと手術のリスクを判断することができる。 |
方策 |
◆症例の種類◆ |
第一年目と同様に当科における心臓血管外科手術に助手、執刀医として従事する。 合併症のない開閉胸等の基本的手技については細かな指導医の監督がなくとも安全に施行できる。難易度(A)の心臓血管手術について指導下に執刀医となる。また術後ICUにおいては術後合併症の早期発見と迅速な対策ができることも目標となる。 さらに進んだ手技として Swan-Ganzカテーテルの挿入とそれによる循環管理、IABPの挿入とそれによる循環管理、レスピレーターによる人工呼吸管理、気管切開、心のう穿刺、胸膣ドレナージ等の処置をおこなう。 |
◆症例数◆ |
正中切開をともなう手術(60-70例)について、合併症のない症例で開閉胸を主体的に行う。また体外循環のカニュレーションについても安全に行い得ることをめざす。 難易度Aの開心術のなかではASD閉鎖手術、三尖弁形成手術(計 年2-3例)、緊急の動脈血栓摘除術を主とする末梢動脈手術(年10例)、初回症例の動静脈吻合の透析用シャント手術(20例)を執刀する。適応のある静脈瘤手術(年10例)では高位結紮+硬化療法を執刀する。また術後管理については重症例以外で主体的役割を果たす。 |
◆手術の範囲◆ |
基本的な心臓血管外科手技についてきちんとした知識、手技を身につけpit fallについて理解する。 比較的難易度の低い指導医執刀症例で第一助手として手術に参加する。 体外循環マニュアル」を実際と関連づけて理解し、基本的な成人体外循環を自身で安全に操作できる。 ICUにおいては心臓血管外科手術の呼吸・循環動態を理解し、薬剤による循環管理、呼吸器操作、酸塩基平衡、輸液、輸血、感染対策などの術前・術中・術後管理が適正にできる。 必要に応じ人工呼吸管理、IABP、PCPS挿入を考慮することができ、指導医のもと施行することができる。 |
教育方針 |
心臓血管外科の基本的手技を監督なしで施行しうることに加え、進んだ難易度の手術を安全に行いうることを目標とする。 また術後合併症の早期発見と迅速な対策ができる。医療事故、アクシデント、インシデント、クレームの発生に迅速かつ適切に対処できる。 活動の場を院外にもひろげ積極的に、心臓血管外科に関する研究論文および症例報告を発表する。あるいは学術集会において心臓血管外科に関する発表を演者として行う。 |
方策 |
◆症例の種類◆ |
同様に当科における心臓血管外科手術に助手、執刀医として従事する。 開閉胸等の基本的手技について安全に施行できる。難易度(B)の心臓血管手術について指導下に執刀医となる。 また術後ICUにおいては術後合併症の早期発見と迅速な対策を主体的に取りうることを目標となる。 必要な場合に IABP、PCPSを導入しそれによる循環管理、レスピレーターによる人工呼吸管理の処置をおこなう。 |
◆症例数◆ |
難易度(B)の心臓血管手術について指導下に執刀医となることが目標である。 合併症がなく、手技的に問題ないと判断される弁膜症手術、粘液種などの心臓腫瘍手術(年15例)について指導医のもとで執刀医となる。冠動脈バイパス術(年30例)で内胸動脈剥離を正確におこなう。冠動脈病変の適した症例では心拍動下冠動脈1枝バイパス術を執刀する。腹部大動脈手術(年30例)では、緊急以外の開腹手術では執刀医となる。ステントグラフト実施医資格取得がすんでいれば腹部ステントグラフト挿入手術を行う。適応のある静脈瘤手術(年20例)ではレーザー焼却術の執刀医となる。透析用動静脈シャントでは初回人工血管を用いたシャント手術を執刀する。 |
◆手術の範囲◆ |
難易度(B)の心臓血管手術について指導下に安全に執刀しうることを目標とする。 指導医が執刀する困難な手術時には第一助手として積極的に手術に参加する。また手術手技上のpit fallについては理解を深めた上で、適切に問題に対応し修復する、または適切に指導医の助力を仰ぐ。 心臓血管外科手術に対し臨床的判断能力と問題解決能力を修得していく基礎固めの学年と考えている。 |
5.3年間の研修後 |
【研究施設】 現在、当院からの他施設研修先は東京女子医大心臓血管外科、国立循環器病センターなどである。このほかにも修練医の希望により、当院修練責任者を通じ他施設への修練依頼を行う用意がある。 |